ロボットを動かそう
ステッピングモータ駆動回路の基本は、励磁(電磁石を動作)するモータコイルのスイッチを順番にONに切替えて、コイルに電流を流していくことです。
図1 ステッピングモータ駆動回路の基本
モータの1相分を取り出した等価回路は、図2のようになります。
図2 1相分の回路
この回路でスイッチをONにした後に流れる電流は、
です。グラフ化すると、図3になります。ここで、を時定数と呼び、スタートから目標の63%までに到達する時間と等しくなります。一般的に、時定数の5倍の時間が経過した後は定常状態とみなします。
図3 モータコイルに流れる電流
このように、回路に変化の起きた直後の現象を過渡現象と呼びます。ごく短い時間に起きる現象なので、テスタでは測定できません。観測にはオシロスコープが必要です。
一般的にはステッピングモータ駆動回路は半導体でモータ各相のスイッチを実現し、マイコンでON-OFFの制御をしています。駆動回路の原理図は図4のようになります。
図4 駆動回路の原理
ステッピングモータは、電流の流し方により、定電圧駆動方式と定電流駆動方式に分類することができます。
定電圧方式は、図4のように一定電圧をモータに印加し、順番にコイルのスイッチを切替えて励磁する方式です。簡単な回路で実現できるので、入門者に向いた方式です。一般的には電流を多く流すためにモータ定格電圧の3~5倍の電圧を印加して駆動しています。
しかし、モータ回転速度が速くなると、電流の立ち上がり時間より励磁切り替え時間の方が短くなるため、電流が十分に流れずトルク不足になります。また、定格電圧より高い電圧のため、低速時は電流がたくさん流れてエネルギーロスになります。
図5 印加電圧と電流の関係
定電流方式は、モータに高い電圧を印加して目標まですばやく電流が流れるようにし、目標電流に到達したら常に一定の電流が流れるように電子回路を用いて制御する方式です。駆動回路はモータに流れる電流を常に監視し、規定以上電流が流れると数kHz~数十KHzの高速で電圧のON-OFFを繰り返すPWM制御により、目標電流を保つようにします。スイッチング方式で電流制限をするので、エネルギーロスは少なくて済み、電池を長持ちさせることができます。
図6 モータに流れる電流
エフテックロボットでは、モータを定電流駆動しています。定電流駆動専用ICを使用し、電池駆動に適したモータを採用していますので、高トルク高速回転が可能です。
ぜひ高速回転できるようになって、ロボット競技会で上位入賞を目指してください。
2001.10